主夫から学ぶ、楽しい子育ては〇〇の関係を

みなさんが「自分は親になったんだな」と実感する瞬間はどんなときですか?

 

子どもが生まれた瞬間、オムツを交換しているとき、パパやママと呼ばれたとき、自分が親になったことを実感するタイミングはたくさんあることでしょう。

 

今回は、そんな実感を意外なタイミングで感じた友人の関戸さんのお話をご紹介します。

《主夫になりぶつかった壁》

 

大学を卒業し8年間NPO業界で働いた後、主夫になるために関戸さんはお仕事を辞めました。

 

そして長男が1歳半~3歳半までの丸2年間、主夫となったのです。

 

「よし、これからは主夫として頑張るぞ!」そういう思いで、家事も育児も完璧を目指していたと言います。

 

1カ月が過ぎ、育児も家事も完璧にこなし「俺って天才イクメン!」と思いながら順調に子育てをしていたときのこと。

 

突然お食事やお着替え、遊びやお片付けなど全てにおいて長男君が「嫌だ!!」と言うようになりました。

 

どうにもこうにも言う事を聞いてくれず気分転換に公園に行くけれど、どんよりした雰囲気は公園でもお互いに引きづってしまい楽しめなかったことが何度もあったようです。

 

 

 

《救ってくれた児童館職員の一言》

 

そんなある日のこと、こんな毎日をどうにかしたいと思い児童館へ行き職員の方にその悩みを打ち明けてみました。

 

すると児童館職員から「それは良かった。それは親として認められた証拠ですね。」と意外な一言が返ってきたそうです。

 

その意味は「1カ月間は親として認めて良いのか、子どもなりのお試し期間。親として子どもが認めた瞬間、どんな自分・我を出しても絶対にこの人は僕を裏切らないと子どもは思い始める。だから子どもがそう思った瞬間から我を出せるようになっただけ。」と言われたそうです。

《ナナメの関係とは》

 

この一言が心に響き、関戸さんは「自分がようやく親として認められた証拠なんだ!」と心が楽になったと言います。

 

とはいえ、思い通りに行かないのはやはり苦しく、そんな中で出した策は「ナナメの関係」の輪を広げることだったと言います。

 

「ナナメの関係」とは、親子(縦の関係)ではなく、公園などに遊びに来ていた他の方々との関係のことを指します。 

 

その輪を広げる工夫は、例えば

 

シャボン玉を飛ばすと子ども達が必ず寄ってきてくれるので、そんな時に一緒に遊べるように日頃から多めにシャボン玉を持っていく。

 

◆砂場の道具を皆で使えるよう多めに持っていき、ちょっとだけ散らばして砂場に置き、自由に使って貰い、一緒に遊べるようにする。

 

◆大きなレジャーシートを持っていき「もしよければ、お荷物をそこへ一緒に置いても良いですよ。」などと声をかけてみる。

 

◆お昼ご飯を持っていく。すると遊びに夢中になっている子どもを見た親が「うちも(午後も引き続き遊べるように)お昼ご飯を買ってこようかしら。」となり「お昼ご飯を買ってくる間、お子さんをうちの子どもと一緒に遊ばせておきますよ。」などと声をかけることにより、助け合いにも繋がる。

 

これら全てにおいて「一緒にやりませんか?」の声かけを意識して行う。 

 

・・・ということをしたそうです。

 

そうして築いた「ナナメの関係」は感謝を生み今でもずっと続いており、子どもにもお友達が増えたり親同士の交流も増え、孤独でなく心がとても楽になったと言います。

 

みんなで一緒に子育てをしている感覚になれたそうです。

《主夫になって学んだ、遊びの必要性》

 

「丸2年間、子どもと一緒に居られて本当に良かった。親のニーズが心から分かったから。」

 

そう言う関戸さんは、自身の主夫としての大きな経験から

 

“子どもと一緒に過ごす時に煮詰まる時間はある→子どもを発散させる必要がある→遊びの必要性がある”

 

ということを実感し、仕事復帰した今はNPOの代表兼プレーリーダーとして、遊び場作りやプレーパークの立ち上げ支援などを行い活躍されています。

 

「ナナメの関係」

 

友人からこのエピソードを聞き、とても素敵な言葉だなと思いました。

 

親として認められたことにより、子どもの我が出て思い通りにいかないと苦しく感じるのは自然なことです。

 

そんな時こそ、少しだけ彼のことを思い出し「ナナメの関係」を築くことを、みなさんも心がけてみてはいかがでしょうか?

《関戸博樹さん》

NPO法人日本冒険遊び場づくり協会代表。フリーランスのプレイワーカーとして冒険遊び場、児童館や放課後児童クラブ、保育園・幼稚園など、全国の子どもの遊び場づくりに関わり、コーディネートやスタッフ研修を行っている。3児の父でもあり、長男が1歳半から3歳半になるまでの2年間を主夫として過ごし、主夫としての経験を活かした親向け講座なども行っている。大妻女子大学非常勤講師。著書に「子どもの放課後にかかわる人のQA50」(学文社・共著) がある。